那須岳・朝日岳・三本槍岳縦走
山行記録  [ back ]

フリガナ  ナスチャウスダケ・アサヒダケ・サンボンヤリダケ
山域・山名  那須茶臼岳(1915m)・朝日岳(1896三本槍岳(1917m)縦走 (三斗小屋温泉) 
日   時  1995年10月21日(土)から10月23日(月)
天   候  晴れ
行   程 10月21日(土)
沼津IC(12:30) (東名) 御殿場IC(12:40) 松田IC(12:56) 厚木IC(13:10) 横浜IC(13:18)  港北PA(13:20-28)  東京料金所(13:33) − 用賀IC(13:38) (首都高速) 小菅JTC(14:38) −浦和料金所(14:44) (東北道) 蓮田IC(14:51) 館林IC(15:08)  佐野SA(15:15-33)  宇都宮IC(16:00) 那須IC(16:25) − 田中屋(大黒荘)(17:00

10月22日(日)
田中屋(7:45) − 那須岳駐車場(8:15-30) − ロープウェイ(8:46) − 山頂駅(9:20-35) − 茶臼岳 − 峰ノ茶屋(10:06) − 朝日岳(10:54-11:10) − 熊見曽根(11:20) − 清水平(11:43-49) − 三本槍岳(12:20-13:00) − お花畑(12:40) − 大峠(13:50-14:10) − 三斗小屋温泉 煙草屋泊(15:40)

10月23日(月)
煙草屋(7:15) − 避難小屋(8:00-10) − 峰の茶屋(8:25-35) − 峠の茶屋(9:15-28) − 駐車場(9:40)
駐車場(9:55) − 那須IC(10:30) (東北道)  佐野SA(11:30-12:25)  浦和料金所(13:00) − 東名用賀(13:55) −  小田原 (14:50) 
所 在 地  栃木県  那須郡那須町
2.5万図  那須岳
緯   度  37.0718
経   度  139.5758
備   考  


10月21日土曜日

 今回の山行は今なお噴煙を上げる関東一の活火山、那須火山帯の縦走である。いつもなら愛車スペクトロンで行くところだが、今回は参加人数が3人ということと、杉本氏が新車「サニー」を購入したというのでサニー号での出発である。

 杉本氏の仕事が終わるのを待って、各自電車にて沼津駅北口に集合。雲一つない絶好の秋晴れの中、那須に向けて出発となる。
 今回は殆ど高速道路中心なのでスペクトロンとは違い、サニー号は快調かつ快適に高速道路を走り抜けていく。やっぱりサニーで行くことにして正解のようだ。

 東名高速は集中工事の最終日であったが、工事箇所もなくほぼ予定通り通過することができる。首都高速にいたっては若干渋滞する箇所もあったがまぁ順調なほうではあるまいか。
 東北道にはいり3車線(宇都宮まで)の道路をパワー不足も感じずに順調に通過していく。途中皇海山、燧ヶ岳と思われる山々を左に見ながら順調に那須ICに到着。

 今回の宿泊先田中屋はメイン道路から一本外れた細い道のところにあり、車のすれ違いが出来ない。当然宿の前に駐車場がないので上の空き地に車を止める事になる。

 鼻をつく硫黄の臭いがたち込めるこの一帯は民宿らしき宿が軒を連ね、メイン道路の方に建ち並ぶ大きな旅館が観光客相手の宿泊地だとすると、こちらは明らかに温泉を目的とした湯治場的存在である。
 宿に着いて一服した後、風呂に入る事にしたが、ここは外の共同浴場に行く事になっているらしく、宿で入り口の鍵を貰って出掛けて行く。
 早速鍵をあけて中に入ると薄暗く風呂場と脱衣所の間に扉などなく、四畳半位の大きさの風呂が2つあるだけだ。

 石鹸もシャンプーも使えないらしく、ただ温泉に浸かるだけしか出来ないらしい。すべて木で出来た浴槽につかると強烈な硫黄の臭いと、真っ白に濁った温泉の色、薄暗い電球に照らされて立ち昇ぼる湯気がなんともいえない雰囲気をかもしだしている。
 いかにも体に効きそうな気になってくるし、ひなびた湯治場の雰囲気を味わうのにはもってこいかもしれない。
 普段は一度しか風呂に入らないが、今回は気に入ってしまい寝る前にもう一度入ってしまった程だ。

10月22日日曜日

 早めに朝食を用意して貰って、那須岳にむけて出発する。ロープウェイの駐車場はもうかなり混んでいて、ようやく止める事が出来たくらいだ。ロープウェイも臨時運転で5分おきに出ているらしい。

 山頂駅に着いてトイレを済ませて茶臼岳に向けて出発する。昨日とはうって変わって山全体に霧がかかり景色がなにも見えない。
 それでも多くの観光客が茶臼岳に登ろうと上がって来ている。相変わらず硫黄の臭いはきつく、足場の悪いガレた道を登り始める。

 山頂駅から約30分で頂上に到着。相変わらず辺りは霧につつまれて何もみえず、取り合えず記念写真を撮って一服したのち朝日岳にむけて出発した。
 茶臼岳山頂付近で岩の間から煙が吹き出ているの見つけ手を近づけてみると、とても熱い。
 大きな岩も黒ずんでおり、土は赤土とは違う富士山でいうスコリアのような色をしていて、さすがに活火山である。
 相変わらず岩だらけの風景をみながら進んでいくと突然、ジェット機のような音に気づき、辺りを見回してみると霧の中に勢いよく吹き上げている煙を発見。あらためてこの山は活発に活動しているんだなぁと思いつつ、爆発でもしたら一巻の終わりだなと思いながら足を進めていく。

 峰の茶屋に着く頃にはだいぶ霧がはれて辺りが見渡せるようになる。茶屋と言っても店があるわけではなくテーブルと椅子があるだけのところである。
 ここから三斗小屋へ行ける道があり、最短コースとなっている。明日は三斗小屋からここへ出てきて、ロープウェイに乗らずに歩いて下る予定になっている。

 この山域は2000mにも満たないが、既に森林限界を超えているためか登山道付近は岩ばかりである。
 峰の茶屋から朝日岳にむかう途中、霧が晴れて景色がだいぶよく見えるようになってきた。
 ところどころ緑色の絨毯のようなものがみえる。はじめはハイマツかと思っていたが、後でしらべてみたらどうやらガンコウランのようだ。

 朝日岳頂上への登りにとりかかると一人ではしゃいでいる外人の女性が下ってくる。後から下ってきた外人はそんなにうるさくはなかったが何を一人で舞い上がっているのか?
 朝日岳山頂はかなり混雑していた。大福とみかんを食べて一服した後、三本槍にむけて出発。

 熊見曽根をすぎた辺りで振り返ると、先ほど登った朝日岳がくっきり姿をあらわしている。さっそく写真機を出してパチリとシャッターを切った。
 このあたりはハイマツとドウダンツツジが群生していて、ドウダンはもう葉を落として冬ごもりの支度をしている。

 清水平への下りはクマザサの間の細い道を滑らないように慎重に下っていく。園芸用の赤玉土や鹿沼土の産地が近いことから考えても、この辺りは関東ローム層特有の赤土であるらしく、濡れていると大変滑りやすくやっかいである。
 下り終わると植生を回復させるためか木道が設置されており、見ためには湿地帯のようにもみえる。

 清水平では何組か昼食をてっとてた。中ノ大倉尾根を通って北温泉へ下るのか、それとも赤面山経由で下山するのか。いづれにしても暖かくいい匂いをさせている。われわれは三本槍で昼食のためもうしばらくは辛抱しなくては。  

 清水平からひとしきり下って、一気に三本槍山頂までの急な登りとなり、本日最後の頂上に到着。
 
 さっそく宿で作ってもらった大きいおにぎりをたべて昼食とする。景色を眺めながら写真を撮ったりしてちょっとながめに休憩をとった。
 この三本槍岳は福島県と栃木県の県境で、その昔この山頂に県境の印として3本の槍を立てたところから三本槍の名が付いたという説があると本に書いてあった。

 ここから大峠までは1時間弱の下りとなる。途中、鏡ケ沼が青々とした水を湛え、その向こうに旭岳がそびえている。
 鏡ケ沼は爆裂火口に出来た火口湖で天城山あたりでは天然記念物となっているモリアオガエルが生息しているという。
 同時にこのあたりはお花畑とよばれており、高山植物も那須連山の中で一番豊富だという。
 たしかにまわりを見渡せばそれらしきものが多数見受けられる。花の時期はさぞやきれいなことだろう(花の時期は7月10日頃から、りんどうは9月上旬、モリアオガエルの産卵は7月10日から15日)

 花の時期が終わって枯れている姿を見ながら大峠に到着。三本槍からこのコースを通る登山者は少ないのか途中2人の登山者に会っただけだった。

 大峠は戊辰戦争で会津軍と官軍の激戦地だったところである。いまは何もその面影は残されてはいない。
 ここでコーヒーを飲もうと思ったが、途中でお湯がなくなってしまって残念。先程追い抜いた2人連れの登山者が追いついてくる。「お先に」と挨拶をかわして最後の目的地三斗小屋温泉を目指す。

 大峠からは先程のような岩ばかりの景色とは違い、樹木にかこまれた中を歩いて行く。
 紅葉も終わり落ち葉を踏みしめながら沢を越えて行く。先ほどとは180度違った趣のある登山道である。
 登りも結構急で、よじ登るようなところがあり、いかにも山歩きという雰囲気だ。
 人も歩いてなく、静かな山歩きが楽しめる。途中反対方向からアルコールの臭いをプンプンさせながら歩いてきた2人組とすれ違っただけだ。
 大峠まではあまり汗をかかなかったが、ここからずっと登りで結構きつかったので、三斗小屋に着く頃には汗でビッショリになってしまった。

 三斗小屋温泉は海抜1500mのところにあり、自家発電で21時以降は石油ランプに切り替わり、ランプの宿と呼ばれている。
 ここには煙草屋と大黒屋という2件の旅館がある。煙草屋は露天風呂あり。
 小屋について受付を済ませて最初は八畳の部屋へといわれたが、もしかすると相部屋になるかもしれないといわれ、それならばと小さい部屋にしてもらう。
 しかし入り口に近く人が頻繁に出入りするのであまりいい環境ではない。もう一度八畳にしてもらえないか頼みに行くと男の人と一緒の相部屋になるとのことであきらめる。

 15時から17時までは露天風呂は女性専用とのことで、藤生さんは早速露天風呂へ。我々は内風呂へ入りにいく。
 内風呂はせまく、かなり混んでいて暫く浴槽の外でまっている。すこし隙間が出来たのでそこへ割り込んでなんとか温泉につかることができた。

 夕食まで時間があるので、酒屋で買ってきたビールと酒を飲みながら時間をつぶす。
 太鼓の音が夕食の合図らしく皆ぞろぞろ集まってくる。
 酒を飲むわけでも無いのであっと言う間に食べ終わり、外で煙草を吸っていると、藤生さんが八畳の部屋が一つ余っているのでそちらに移りますかと旅館の人が言ってきたというのでさっそく移動する。先ほどと違って一番奥で静かだし、トイレも近くて言うことなし。

 せっかく露天風呂があるので煙草屋へ予約をしたのだからと外はもう真っ暗で何も見えない中、懐中電灯を片手に2人で露天風呂へと出掛けていく。すでに何人か入っていたが、真っ暗のため顔も見えない。
 人工的な灯りがない真っ暗闇の山のなかで、星空を見上て入る露天風呂はなんとも風情があって、まさに山に登った者のみが味わえるこのうえない至福の一時だ。

 風呂から出て残りのビールと酒を飲み今日一日の疲れをとるべく早々と就寝。

10月23日月曜日

 翌朝は6時30分前に朝食を済ませ、コーヒーを飲んで出発する。
 避難小屋で休憩をとり一気に最後の登りにとりかかる。登りもようやく終わりかけたと思った時、突然後ろのほうで落石がおこる。幸い人はだれも歩いていなかったので大事には至らなかったが、これだけ岩がガラガラ積み重なっていれば当然落石があっても不思議ではないと感じながら当たらずに済んでよかったとふと思う。

 峰の茶屋についたところで大勢の中学生と出会う。聞けば宿泊学習で来たとのこと。
 わいわいがやがややりながら元気よく登っていく姿をみていると、いじめや自殺など中高生が抱えている問題などまったく無縁に思えてならない。やはり若さは財産である!。

 もうここからはだらだらした坂を下れば駐車場である。峠の茶屋でダンゴと甘酒を飲んで今回の山行をしめくくる。                           

 今回の山行は今なお噴煙をあげる活火山、茶臼岳。三本槍岳までは岩がむき出し、一方大峠から三斗小屋温泉までは木々にかこまれた山で全く違う姿をしている。
 活火山らしい男性的な部分と、しっとりした女性的な部分を両方兼ね備えたような山であった。
 10月も下旬になり、そろそろ雪の季節となるほんのすこし前、すでに紅葉の時期はすぎて山は秋が足早に通り過ぎ、厳しい冬を迎えるべく、木々は冬支度の真っ最中であった。
 


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