出発3日前にようやく木曽の御嶽山に行くことが決定する。実家に杉本さんに迎えに来てもらい、藤生さんを迎えに行く。
私を迎えに来る前に一度藤生さんを迎えに行ったのだが留守だったらしく、もう一度行くと娘さんが出てきて曽我さんの家にいると言うのでそちらに向かうと連絡ミスで駅で待っていたという。
ようやく3人が揃って、杉本さんの車で19時25分、木曽の御嶽山に向かって出発である。
沼津の豚平で夕食を食べて、沼津インターから富士インター、朝霧経由で甲府南インターで中央高速に乗る。
八ヶ岳PAで休憩を取って、塩尻インターで降り国道19号線に入る。19号線から林道に入り、曲がりくねった道を車で約1時間、標高2200m、御嶽山田の原駐車場に到着。
時計は既に午前1時。かなり広い駐車場には多くの車が止まっていて、まだぞくぞくと上ってくる。
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田ノ原のトイレと御嶽山 |
早速、テントをぴっぽなげて設営し、仮眠の準備をする。私と杉本さんはテントで、藤生さんは車の中で仮眠を取ることにした。
テントの中から顔だけ出して、ビールを飲みながら夜空を眺めると満天の星が輝いている。こんなにも沢山の星があったのかと、しばらく呆然と眺めていると、流れ星が尾を引いて夜空を横切った。天の川もはっきりと見えている。なんともロマンチックである。隣にいるのが杉本さんでなかったらもっとロマンチックだったに違いない。
最高の星空を眺めながらビールと日本酒を飲んでテントの中で仮眠を取ったが次々にやってくる車のライトと多少の寒さで、うとうとしては目が覚めてしまう。
辺りが明るくなるとだんだん話声が気になって寝ていられない。時計を見ると5時を少し回ったところだったが思い切って起きることにする。
テントを出て辺りを見回すと、昨日は真っ暗で判らなかったが、目の前に大きくこれから登る御岳山が聳えている。半袖では寒いので長袖を着て朝食を食べ、出発準備をする。
先月登った月山もそうだが、御嶽山も昔から信仰の山として栄え、今でも白装束姿の人が目立つ。富士山と同じ六角棒をついて登って行く人もいる。
登山口の鳥居の前に立って眺めると、これから登る登山道が山頂に向かって真っ直ぐに延びている。かなり直登のようだ。
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登山道には所々に建っている |
田の原天然公園の中を真っ直ぐに進むと大江権現で、ここから本格的な登山道になる。
オオシラビソの樹林の中を木の階段が延々と続き一苦労させられる。歩き始めは何時も大変かったるい。
木の階段が終わると今度は石の階段状の登りとなり、イワカガミの葉と咲き終わったアザミが目に付く。
ようやく体が慣れた頃、ふと周りを見渡すと高い木が無くなっている。時計の高度計を見ると2500mを越えていてどうやら森林限界を超えたようだ。
青銅の像が立ち並び下を見ると田の原の駐車場が小さく見えている。上を見上げると王滝山頂小屋が大きく見える。
両側にハイマツが生い茂り石伝いに高度を上げていくと八合目に到着。ここで小休止。山頂付近は時々ガスがかかって見えなくなったり、又晴れて見えたりを繰り返している。
王滝山頂小屋はもうすぐそこだ。小屋まで休憩無しで3人共声もなくただもくもくと歩き続ける。
九合目を過ぎると硫黄の臭いが微かにする。九合目の避難小屋をすぎると一口水だ。岩の割れ目に差し込まれたパイプから申し訳無い程度の水が滴り落ちている。帰りに飲むことにして通過する。
ようやく王滝山頂小屋に着いたときには3人ともバテバテ状態。すぐそこに見えていた小屋だったが、歩くと結構かかるものだ。ちょうど八合目が標高2800mで小屋が2900mの位置にある。空気も薄くなり高山病にかかり始める高さである。しかもかなりの急坂で、降りの時に登ってくる人達はみなハァーハァー言いながら登っていたのを見てもここが胸突き八丁であったようだ。
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斜面から噴煙が上がっている |
小屋の直ぐ上に立派な神社があり、ここで写真を取って休憩出来る場所を探しながら裏側へ出ると、突然蒸気の吹き上がるすさまじい音が耳に聞こえてくる。見れば噴気口からものすごい勢いで蒸気が上がっている。硫黄の臭いもかなりきつい。
休憩している人が去年はもっと近くから吹き上がっていたと教えてくれた。
この蒸気をみながら腰を下ろしてひと休み。ここはもう標高2900m、天気はいいがかなりすずしい。長袖をはおって休憩していないと寒いくらいだ。ここから山頂がよく見えているが、かなりの急登のようである。
この先は植物のまったく生えていない砂礫の道である。ゆっくりと進むこと20分、ようやく念願の御嶽山剣が峰に立つことが出来た。
数年前、乗鞍岳の山頂から見た御岳山はすばらしく、いつか登りたいと思っていた山である。
標高3067mからの眺めはすばらしいと思うのだが、生憎と雲がかかっていて展望はよくない。真下にコバルト色をした二ノ池が綺麗に見えるだけである。
それにしても山頂付近はかなりきたない。山小屋のすぐ下はビンの割れたゴミだらけで山小屋で捨てたとしか思われない惨状である。大きなビニールシートも捨てられており、信仰と自然保護とは直接結びつかないのだろうか。この山も富士山と同じ状況が起こりつつあるようだ。
一口水の所で休憩して、藤生さんは水を飲む為に行列が出来ている中を並んで飲んでみたがあまりおいしくないといっていた。
田の原の駐車場まで戻って観光センターで杉本さんはザルそばを食べて我々はコーヒーを飲む。ザルソバはあまりおいしくなかったようだ。
時間的にまだ早いのでどこかへ寄って宿へ向かおうとパンフレットを見ていると赤沢自然休養林で渓谷沿いを鉄道が走っていると書いてある。15時30分までだと言うことで行って見ることにする。
赤沢自然休養林につくと、家族連れでかなり賑わっており、鉄道は15時30分が満員で次は16時と書いてある。おまけにパンフレットには600円と載っていたのに、施設利用券らしきものを別に1200円出して買わなくてはダメだと言われ、時間もないしあきらめて宿に向かうことにする。
燃料を補給し、今夜の宿国民宿舎「ねざめホテル」を探しながら国道19号線を走っていくと、道路沿いの一段高くなっているところに「ねざめホテル」の看板が出ている。みれば立派な建物である。本当にこれがそうなのかと驚きながら受付カウンターで宿泊の手続きをすると確かに名前があった。
本当に料金は8000円なのだろうかと思っていると受付カードに8000円と書き込んである。
部屋に入って時間が早いので一休みしてから風呂に入りに行く。トロン温泉で夜中も入浴可能。風呂は大きく空いていて快適だが、西日が差し込んでとても蒸し暑い。そう長くは入っていられずすぐに出てしまう。
夕食は18時30分から1階のレストランでとることになっている。さしみ、牛肉と野菜の焼き肉、マスの塩焼き、ソバ、天ぷらと種類も豊富だ。おまけに生ビールもちゃんと用意されている。
これで8000円は大変安い。パンフレットによると部屋にバス・トイレが付いているタイプが12000円、トイレ付きが10000円、部屋のみだと8000円である。施設の中に大浴場はあるし、洗面所とトイレを部屋の外に行くだけで4000円も違うならば8000円の部屋にした方が得である。
夕食が済んで、部屋に帰るとちゃんと布団が敷いてある。寝転がってテレビを見ていると隣でいびきをかいて杉本さんが寝始めた。
しまった!この人がこんなり早く寝てしまっては夜中にごそごそ起き出してテレビでも見られては寝てはいられない、と思っていたが予想に反してトイレにも行かずに朝までぐっすり寝てしまったと本人は行っていた。藤生さんと私は寝る前にもう一度風呂に入ってぐっすり就寝。
翌日は昨日よりもいい天気である。朝食を済ませて宿を出たのが8時30分。国道19号線を走って妻篭宿の方へ入り、途中から南木曽岳登山口の看板を左折して登山口に向かう。
キャンプ場をすぎて登山口の手前で重機が道を塞いで伐採作業をやっていて車が入れない。しかたなくバンガローの所まで戻って車を止めてそこから歩き出すことになってしまった。
今日登る南木曽岳は、御岳・木曽駒ヶ岳と並んで木曽三山と呼ばれ信仰された山で、地味ではあるが由緒正しき?山である。
林道をしばらく歩くとゲートがあり車が止まっている。本来はここまで来る予定だったのにと思いながら自然探勝園として整備されている道を歩いていく。
途中にあずま屋があり、そこで一服。この先で一旦林道を歩き、本格的な登山道となる。
丸木でつくられた橋を渡ってしばらく行くと「頂上からの下山道」の標識が現れる。案内書には下山道はかなりの急坂だと書いてある。
登山道をもくもくと登っていくと体中の穴という穴から汗が吹き出して燃えているように暑い。やはり夏場にこういう山には登るものではない。休憩して水分を補給する。
昨日と違ってかなりの水分が必要のようだ。高度が上がるにつれて多少風が出て来てしのぎやすくなったものの、それでも相変わらず体中から汗が吹き出して衣服はびっしょりと濡れている。
登山道脇の樹木を見ると秋の紅葉はすばらしいだろうなと思わせる木が大変多い。頂上からの眺めも最高らしいので、この山は秋のすずしい時期に登るのが正解かもしれない。
汗をかきかき登ってくると鎖場に到着。20mの鎖場を通過すれば頂上はもうすぐそこだ。
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二ノ池 |
木に囲まれて展望のきかないところが南木曽岳山頂である。写真を撮ってその先の展望台へ行ってみたが霞がかっていて山は見えない。
展望がきく季節ならば北アルプス・中央アルプス・御嶽山・恵那山など360度の展望が望めるのだが残念である。
どこか丁度いい場所はないかと探したが見つからず、登山道脇に腰を下ろして、藤生さんが持ってきた梨を杉本さんが担いできたのでみんなで食べる。水分が多くほんのりと甘くて疲れて汗をかいた体には大変ありがたい。
休憩後に下山道へと向かうとすぐ先に立派な避難小屋が建っておりその先に摩利支天山があった。休憩にはちょうど良い場所だったと後悔しながら通過する。
この後の下山道はまさに垂直とはすこし言葉が大袈裟だけれどそれに近いくらいのものすごい下山道である。梯子を使い、鎖を使い、両手両足、時には尻まで使って慎重に降りてくる。さすがに最後には足が痛くなってしまった。
登りの時にあった「頂上からの下山道」の標識の所まで来てようやく下山道の意味を理解した。まぁよっぽどの人でなければこの下山道を登りに使う人はいないはずである。
行きに休憩したあずま屋で休憩を取って、バンガローの駐車場へと戻ってくる。
びっしょりと汗をかいた体を綺麗にするために早速温泉へと向かう。今回の入浴は木曽路館である。
1階が土産物売場になっており、2階に風呂場がある。入浴料金は1人800円で何回でも入浴可能である。内風呂と露天風呂があり、外には椅子が設置されていて休憩することも可能だ。日曜日ということもあり、かなりの混雑である。
入浴をすませて木曽路館のすぐ先にある一軒のそばや「蝶屋」で遅い昼食をとり、国道19号線を南下し、中津川より中央高速に乗って、岡谷経由で20時45分無事帰宅。
御嶽山は3000mを越す21座の内、14番目に位置する高峰で富士山と同じ独立峰である。下から見上げた姿も大変立派で、登ってみればさすがに3000m級の山である。
一方南木曽岳の方は暑さに苦しみ展望も今一つだったが木曽三山として信仰された山だけあって道の険しさは相当なものである。秋の紅葉の時期に展望と共にもう一度訪れてみたいそんな山であった。
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