今年の夏は手軽に登れて景色が良く、しかも北アルプスと言う事で唐松岳に行く計画を立てた。
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シロバナハクサンコザクラ |
2ヶ月前から山小屋の予約をし、待ちに待った出発直前になってなんと台風が接近しているではないか。しかもこの台風日本に近付いてしばらく停滞するらしい。
気象情報の度にラジオのボリュームを上げて台風の動きを確認しながら走っていくが、ラジオでは天気図が判らず、どうも紀伊半島の手前まで来ているが今後は複雑な動きをしそうだと言う事で、どう判断したらよいのやら困ってしまう。
八方尾根に着いた時点では晴れている。このあたりはまだ台風の影響はないらしい。取り合えず有料の駐車場に車を止めて、唐松岳方面を眺めると山頂付近は雲に覆われている。
この時点でも台風の動きがはっきりせず、どうも南にずれて影響は無さそうだが、翌日雨が降ると厄介だし、この分では展望も期待出来そうも無く、山小屋泊は諦めて登れるところまで行って引き返す事にして、八方尾根のゴンドラ乗り場に向かう。
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真夏でも雪渓が残ってます |
お盆の時期でもあり、家族連れやカップルなど観光客でかなり混雑しているコンドラ「アダム」に乗って標高差1000mを一気に登ってしまう。
山頂駅で山小屋にキャンセルの電話を入れて、さらにリフトを2つ乗り付いであっと言う間に八方池山荘まで来てしまう。
リフトを降りると売店があり、ソフトクリームなどを売っている。登山道は蟻の行列のごとく登山者と観光客が入り乱れ大混雑である。こんな光景を目にすると思わず帰ってしまいたくなる。サンダル履きの奴と並んで歩くなどなっぴらご免だが、これも途中までだと諦めて観光客に混じって木道を歩き始めた。
両側には結構花も咲いていて、混雑して自分のペースで歩けない状態では花を見ながらのんびりと歩くには丁度いいペースである。
そうこうしているうちに八方池に到着。青々した池を想像していたが土色の濁った色をしていて、観光客が大勢休憩している。
周りの景色は雲に隠れて見る事も出来ず、立ち止まっていると曽我さんが先へ先へと促すので八方池を通り越して先に進んで行く。どうやら本気で唐松岳登頂を目論んでいるらしい。
ここから先は観光客と分れて登山者の領域となるのかぐっと人が少なくなる。大谷さんがぐんぐんと先頭を引っ張るので皆つられて先へ先へと進んで行くが、一体何処まで登るつもりなのか?皆本気で山頂を目指しているのだろうか。行けるところまでとは言っても限界があるわけで登りのタイムリミットは13時と密かに心に決めていたが、今日は全員調子がいいようでこのペースで行くともしかしたら山頂を踏む事も可能ではないかと思われる。
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チングルマ |
イワギキョウ |
樹林の中を進んで行くと扇の雪渓が現れた。今年はどこもかなり雪が多いらしくこの雪渓もまだ大分雪が残っており、この分でいくと最後まで消える事はないだろう。この雪渓の下部で大勢休憩をしていたが、横目に見ながら先を急ぐ。
丸山ケルンが立つ丸山まで来てちょっと休憩をとった。ここまで来ると周囲が開けて晴れていればかなり素晴らしい景色が広がるのだろうけれど、生憎とガスがかかってしまって展望がきかない。
休憩している間に唐松岳方面のガスがはれ登山道が見えた。まだかなり急な斜面を這うように登山道が伸びているのが判る。
さて、どうしたものか、ここまで来たからには山頂まで行きたいのが当たり前で、地図を見るとここから約1時間20分の行程となっている。時計を見ると11時40分、コースタイム通りで行けば13時には山頂に立つ事が出来そうだ。
皆ここで引き返すと言わないところを見ると全員密かに登頂を目論んでいるに違いない。水分を補給して、気合を入れ直し山頂目指して歩き出した。
暫く歩いていると、後ろで藤生さんが下って来た登山者に山頂はあそこですか?と尋ねている。かえって来た答えは藤生さんの考えとは裏腹にあの山の向こうですと、無常にもつれない答えであった。
丸山ケルンから先は岩と這松の世界である。両側には遮る物が無く、時々ガスが晴れて姿を見せる山肌は切り立った岩壁が目に物凄い迫力で、さすが北アルプスである。
崩れて痩せた尾根を慎重に通過して、道が2つに分れている場所に出た。辺りはガスで何も見えず、さてどっちに行ったら良いものやら迷ったが、近くにいた人に尋ねると小屋はこちらの道だと言うので言われた通りに行って見ると、想像していたよりもかなり大きくて立派な建物が建っている。
既に大勢の登山著が小屋の前で昼食を食べている。中を覗くと美味そうに生ビールを飲んでいる人もいる。
天気さえ良ければここで1泊のばずだったのに、あー生ビールが飲めたのにと恨めしく思いながらも小屋を通過して山頂に向かった。
小屋を過ぎると両側にロープが張ってあり、曽我さんが、お!咲いてると言うのでガスの中を注意して見るとコマクサが咲いていた。
どうもこの道は先程2つに分れていたもう片方の道に繋がっているようだ。と言う事は我々はちょっと遠回りをしてしまったようだ。
ここから今日最後の登りである。下を向いてもくもくと、疲れて腹が減った体を上へ上へと持ち上げて行く。大勢の人が休憩している姿が見えこれより上に道もなく遂に山頂に到着のようである。
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唐松岳山頂にて |
やった、やった、遂にやりました、全員で唐松岳山頂に立ったのである。出発当初は行けるところまでと言っておきながら、やはり山頂に立つのと途中で引き返すのとでは、全然違うものである。
それにしても皆良く歩いたものである。休憩込みでコースタイム通りとは大したものだ。この分ならまだまだ当分大丈夫でしょう。
山頂に腰を下ろし早速昼食にした。相変わらず周りはガスに覆われてしまって、展望はゼロである。晴れていれば剣岳を始めとした後立山連邦の山々を眺める事が出来たのにまことに残念でならない。
ゴンドラの最終時間に間に合わせなくてはならないので、あまりのんびりしている時間も無く、サッサッと食べて写真を撮って下り始めた。
下りは藤生さんがぐんぐんと先頭と歩いて行く。山頂手前でシャリバテしていたようだが、今はすっかり快復し絶好調のようだ。
扇の雪渓まで下って来るとまだぞくぞくと登ってくる登山者とすれ違う。
八方池の手前まで来ると山頂付近がガスに覆われてはいるものの、すばらしい眺めの白馬三山が目の前に見えている。さすがに北アルプス、他の山とは一味も二味も違った山容はまた格別のものである。
ここから再び観光客に混じって八方池山荘まで下り、皆でソフトクリームを食べてリフトとゴンドラを乗り継いで八方駅まで戻って来た。
さてこれからどうするか、取り合えず電話で明日の天気予報を聞いてみた。どうやら天気は持ちそうである。となるとあとは宿の手配である。
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オニシオガマ |
チャボゼキショウ |
お盆休みの初日で果たして宿が取れるのだろうか。曽我さんが白馬観光案内所に電話をすると、紹介しますので案内所まで来てほしいと言われ、白馬駅にある観光案内所に向かった。
予算7000円から8000円くらいでと言うとあっけないほど簡単に予約する事が出来て、ここで料金を支払って場所を聞いて宿に向かった。
宿はかなり混雑しているのかと思っていたが、そんなことはなく、なんだかひっそりとしている。受付を済ませて部屋に入り、一息ついて風呂に入りに出かけた。
1泊2食付きで7000円、おまけに風呂は温泉である。他に宿泊客もいるがほとんど貸切り状態のようである。
夕食も料金の割には結構色々な物が並んでいて、これはいい宿を紹介してもらったものである。今日の宿泊客は4組で我々を含めて12名のようだ。お盆の時期にこれでは商売上がったと言った感じだが、この辺りは夏場はあまり宿泊客がいないのかもしれない。
まあ宿の経営を私が心配してもしょうがない訳で、快適な一夜を過ごさせてもらった。
翌日は朝から晴れている。窓から山を眺めると山頂付近は相変わらず雲に覆われていれ今日もスッキリと言う訳にはいきそうもない。
ゆっくりと朝食を済ませて、栂池自然園に向かって出発した。途中のコンビニで飲料水とパンを買ったが、日曜日の朝からコンビニの前で白バイに捕まった運の悪い人がいる。これじゃ折角の旅行も台無しじゃないかと他人事ながら可哀想に思ってしまう。
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モウセンゴケ |
ワタスゲ |
栂池高原スキー場の駐車場も朝から既にかなりの車が止まっている。高原駅からゴンドラ「イブ」に乗り、栂の森で下りて、栂池ロープウェイに乗り換えて栂池平まで運んでもらう。
この辺りまで来ると、天気が悪く昨日と同じく辺りはガスに覆われてしまっている。栂池自然園の中には結構花が咲いていて入口で買った花の本を見て花の名前を確認しながら木道の中をぶらぶらと歩いて行く。ちょうどワタズゲとニッコウキスゲが一杯咲いていてとても奇麗だ。
浮島湿原まで歩いてみたが、この先晴れていれば白馬三山がとても奇麗にみえる場所があるが、今日はガスで何も見えず、行ってもしょうがないので、ここでパンを食べて引き返した。
ここも尾瀬と一緒でとても自分のペースで歩けるところではなく、観念して蟻の行列のように前に人にくっ付いてだらだらと歩くしか仕方がない。
途中で曽我さんが写真を撮ると言うので先に歩いて出口で待っていると、何時まで経っても出てこない。どうしちゃったんだろうと3人で歩きはじめると前の方から歩いて来た。我々が資料館を見ている間に先にロープウェイ乗り場に向かって歩いて行ってしまったらしい。
駐車場まで戻って入浴の支度をして、再びロープウェイ乗り場の隣にある温泉に入りに行く。ロープウェイを利用した人は100円引きで入用出来るとあちらこちらに宣伝の紙が貼ってあり、つられて入ってみたがなかなか広くて快適であった。
風呂から上がって、ビンの牛乳の自動販売機が目に入る。おー今時ビンの牛乳とは珍しいと1本買って腰に手をあてて一気に飲み干した。冷えていて、とてもうまい。やはりビンものは紙や缶とは一味違った美味さがある。
駐車場を出て途中で昼食にソバでも食べようと探しながら行ったが、どこもかなりの行列で仕方なく通り過ぎ、空いていそうなソバの旗が立っているところに入った。普段は居酒屋らしい店だったがソバはまあまあの味である。
豊科まで多少渋滞にあった他は驚くほど順調に沼津まで帰って来た。こちらは台風の影響があったのか普段なら大渋滞しているインター周辺がガラガラである。国道1号線も土曜の朝並の交通量しかなく、低迷を続ける伊豆の観光に台風9号が及ぼした影響は計り知れないものがありそうだ。
今回は台風9号に翻弄されたが、結果的には雨にも降られず、展望はダメだったが、山頂に立つ事が出来て、2日間の日程を無事に終える事が出来た。
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