富士山
山行記録  [ back ]

フリガナ フジサン 
山域・山名 富士山 3776m 
日   時 2001年8月29日 水曜日 
天   候 晴れ 
行   程 五合目富士宮口 − 富士山頂 − 五合目富士宮口 
所 在 地 山梨県富士吉田市、南都留郡鳴沢村、静岡県御殿場市、富士市、富士宮市、駿東郡小山町 
2.5万図 富士山 
緯   度 35.2127 
経   度 138.435 
備   考  


 夏が終わろうとしている。今年の夏はどこの山にも行けなかったなぁと思っていたら、杉本さんから29日に息子とその友人2名を連れて富士山に行くと連絡があった。
 夏休み明けで休みは取りづらいし、その場は断ったが代休がたまりっぱなしで仕事も暇だし、皆それぞれに代休をとるのでお前も休めと言われ、それなら明日休みますと前日になって急に休みをとって同行する事にした。
夜明け前

 この時期富士山は既に登山シーズンを終えており、営業している山小屋も七合目以上は九合目のみ、今回は中1トリオも一緒だし万一何かあったらと、ツエルト持参で山頂でのご来光は諦めて、明け方から登る事になった。

 午前2時に出発して裾野から南富士エバーグリーンラインを通り午前3時30分富士山五合目に到着、登山口に近い場所に車を止めた。
 車の外に出てみると空は光輝くまぶしいばかりの星で埋め尽くされている。半袖では寒くていられず長袖シャツを着込んで車内で朝食をとり、ヘッドライトをつけて登山口(富士宮口)に向かう。
 確かここにはバイオトイレが設置されているはずである。辺りをライトで照らしてみると登山口の方向にトイレの矢印が書いてある。
 登山口を少し登った所に立派なトイレがあり、入って見ると男性用トイレは大便の方が使用禁止で女性用トイレを使って下さいと書かれている。
 夜中で誰もいないからいいようなものの、昼間じゃちょっと恥ずかしい。
日の出

 さて無事トイレを済ませて眼下に広がる街明かりを背に山頂に向けて登り始めた。
 足下を照らしながらかなりゆっくりしたペースで歩いて行くとすぐに新六合目の山小屋がある。宿の人に杖をすすめられたが、どうもあの杖を突いて歩くと素人みたいで格好が悪いので遠慮した。まあ前回は嬉しがって山小屋へ着く度に焼き印を押してもらって喜んでいたのだが・・・でも富士山は滑りやすいので杖(ストック)があった方が楽な事は間違いない。

 新六合目を過ぎたあたりから何だか頭が痛くなって来た。もしやもう高山病の症状か?と思いながら砂礫と火山岩の登山道を登って行くと、段々と夜が明けて明るくなって来た。
 もうライトも要らないだろうと頭からはずしたらピタッと頭が痛くなくなった。ただライトのベルトできつく頭を締め付けているだけの事だったのだ。まあ一安心、こんなところで高山病じゃ格好悪くてしょうがない。
 この後は最後まで頭が痛くなる事もなくどうやら高山病にかからなかったようだ。
 そうこうしている内に雲の切れ間から太陽が顔を出そうとしている。デジカメを構えてその時を逃してなるものかと日の出を数枚写真におさめた。
 今の所天気も良く南アルプス方面の山並みが見えている。風もなく思った程寒くはない。
 
富士山頂
上を見ると青空の下に八合目の山小屋と鳥居が見えている。久しぶりの山でいい雰囲気にしたっていたら突然下の方から爆音が鳴り始めた。
 何事が起きたのかと振り返って見ると雲海の中からその爆音が聞こえて来る。どうやら朝っぱらから実弾演習をやっているようだ。
 折角の雰囲気がぶち壊しどころか自分が今登っている富士山に向かって実弾を打ち込んでいると考えたら何だか無性に腹が立って来た。しかし腹が立った所でどうする事も出来ないので気にせずに行くしか仕方がない。

 八合目の山小屋に着くと既に営業は終了してしまっている。夏の間だけ開設している診療所もすでに閉鎖され、後にはトイレから垂れ流された汚水で黄色く変色した山の斜面だけが残されている。周りではハエがぶんぶんとうるさく飛び回りこれもまた富士山なのだ。
 ところで今日は杉本さんの調子が今一のようだ。どうも遅れ加減である。九合目に着いて下を見るとかなり下を歩いている。中1トリオは待ちくたびれてザックを枕に昼寝をはじめてしまった。
山頂の気温

 杉本さんが来るまで椅子に座って待っていたが、フッと隣を見るとカップルが1組いる。女性の方はいかにも辛そうにうずくまっている。そばでポツンと彼氏がその姿を見守っていた。すると、
彼氏「どうするの?」
彼女「・・・」
彼氏「山頂はすぐ上だよ」
彼女「・・・」
彼氏「ここまで来て登らないで帰る気?」
彼女「・・・」
私(心の中)「おーもめてるぞ、ワクワク」「やれ、やれー」
すると私の心の言葉が通じたのか
彼氏「だいたい山頂で日の出をみようと思ってやって来たのに一体誰のせいでみられなかったと思っているの」
彼女「・・・」
私(心の中)「フフフ、決まったな、このカップルもここまでだな。ニヤ」
すると彼女はヌウッと立ち上がり、おおここで彼氏の頬でもひっぱたくか、と思いきや
彼女「トイレは何処ですか」
と山小屋の人に尋ねてトイレに消えてしまった。トイレから出てきた彼女よーし今度こそと思いきや、スーッと山頂に向かって又歩き始めた。
 彼氏も前に彼女のザックを抱え、背中に自分のザックを背負って登って行ったが、彼女の足取りは遅々として進まず、彼氏はこの後も先へ進んでは岩に腰掛けて待つ事を強いられていた。
 無事に2人で山頂を踏んだのかどうかは分からないが、下山後、さらに愛が深まったのか大きな溝となってしまったのか、問題はそこであるが、残念ながら知る術がない。
 しかし自分のかわいい娘に彼氏が出来たら早速2人で富士山に行くように仕向けようと心に決めたのは言うまでもない。もちろんこっそり後をつける事をつけ加えておこう。(うそうそ)
山頂にて
 大体普段山になど登らない人はただでさえ疲れるのに、周りの景色は火山岩がごろごろしているだけ、おまけに空気は薄くて息苦しいとくれば、悪い事もしていないのに地獄で罰を与えられている気分になってもおかしくない。
 おお!そうか、下界じゃさえないが山の上じゃこっちのもんだから、富士山にでも連れて来ればって一体誰を連れて来るんだ、今更遅そいっちゅーの。

 とまあどうでもいい事をつらつらと書いちゃったが、この九合目で杉本さんと別れ中1トリオを引き連れて先に山頂を目指す。標高は既に3000mをはるかに越えてここから先は中1トリオとえいどもかなり苦労しているようだ。

 九合五尺でちょっと休憩をして一気に山頂に向かう。ここが一番苦労する所だ。最盛期だと数珠繋ぎ状態で登りたくても動けない状態なのでさほどでも無いだろうが今日は登山者もまばらでそんな事はない。
 ここは苦しくてもゆっくり休まずに一気に山頂まで行ってしまう方がよい。声をかけながら山頂まで引っ張ってしまったが、さすがにサッカーをやっているだけあって遅れる事なくついて来た。

 山頂にも小屋があるがここも既に店じまい。小屋を廻り込むとお釜が見えるが三人共お釜の大きさにビックリしている様子。風もなく穏やかで、青空とお釜の景色がすばらしい。だが周りは雲に覆われてしまって残念ながら山座同定は出来ない。
解体工事が始まったレーダードーム

 ここでお鉢巡りをしようかと思ったが後から杉本さんが登って来てすれ違いにでもなったら嫌なので先に測候所の横にある最高地点まで行って写真を撮る事にした。
 測候所は現在レーダードームの撤去作業が行われていて、富士吉田市に払い下げが決まっている。
 写真を撮って頂上小屋まで戻って来ると杉本さんから携帯に電話が入った。今九合五尺にいると言うので杉本さんには登頂を諦めてもらい我々が下山する事にした。

 九合五尺で再び全員が揃い、お湯を沸かしてカップラーメンを食べて少し昼寝をして元来た道を引き返す。
 砂礫と火山岩は意外に滑りやすく、中1トリオも尻餅を数回つきながらの下山である。乾ききっている登山道は前を人が歩くとたちまち砂煙を巻き上げる。

 中1トリオは新六合目の小屋でお土産を見てから下ると言うのでここから先は単に観光客もうろうろしている場所だし危険も無いので一人先に下山してしまう。
 車に荷物を積んでサンダルに履きかえ売店の前の椅子に座ってジュースを飲みながら皆の到着を待っていると、元気に中1トリオが下って来た。
 それから暫くして杉本さんも無事に到着。今日は最初から最後までエンジンかからずじまいの杉本さんであった。
富士山頂の火口付近

 16年振りに訪れた富士山は登山客も少なく、実に快適であった。富士山に登るならこの時期のしかも平日に限る。
 長年高所よりレーダーで台風をとらえ続けて来た「レーダードーム」の撤去作業の風景を間近に見る機会にも恵まれる事が出来た。
 このレーダー設置に関する事は新田次郎著「富士山頂」に詳しく書かれている。
 この程度の混雑なら体力作りを兼ねてまた来てもいいかなとフッと思ったが、人に聞かれればやはり悪い事は言わないからおやめなさいと言うにちがいない。 

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