朝起きてラジオをつけて「ラジオ深夜便」を聞きながら朝食を食べる。ここのところこれが習慣になってしまった。
今日は「山小屋のともしび」が流れて来た。山の中で聞く山の歌はいいもんだ。特に単独行で話し相手もいない場合何となく励ましてもらっているようで元気が出てくるような気がする。
足の状態が心配だがテーピングして登山靴と足の間に予備の靴下をいれてあまりテンションがかからないようにして出発した。
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山の中で迎えた6日目の朝。朝のうちは天気が良かった |
小屋の裏からいきなりの登り道、朝からちょっと堪えるが、今の私には下りよりも登りの方がありがたい。足を気にしながら歩いていたらいきなりバランスを崩してハイマツの中に転げ落ちた。慌ててハイマツにつかまったが一歩間違えば下まで滑り落ちる所だった。朝からこれじゃ今日は先が思いやられるな。
この先もずーっと登山道は登り一辺倒、ひたすら登る、登る、兎岳直下はもの凄い急登。
やっとの事で兎岳まで来て登山靴をはき直す。
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兎岳直下の急登 ひらすらうつむいて登る、登る、登る |
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直登をあえぎながらようやく登った兎岳 |
一旦岩場を下って登り返すのだがやっぱり下りは両足に激痛がはしる。聖岳への最後の直登を登っていると雨が降って来た。慌ててカッパを着て聖岳山頂へ向かう。
山の斜面に咲く花々。南アルプスはお花畑にロープが張ってあるわけでもないし、立ち入り禁止の看板があるわけでも無い。放任主義と言うか登山者のモラル任せと言うか、この辺りも北アルプスとは大違い。
兎平から下って鞍部に出て聖岳方面を見たところ。残念ながら山頂付近は雲がかかってしまっていて見えない。
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山頂付近は雲の中 |
一瞬の晴れ間を写真に写す |
広河原を出発して6日目、日本最南端の3000m峰聖岳に登頂。喜びも感慨深いものがある。
今回の行程では最後の3000m峰、これで6座目。山頂は残念ながらガスがかかって真っ白で展望は何も見えない。
南アルプスは交通の便が不便で山も大きくて奥が深く1泊で登れる山はごく一部に限られてしまい登るなら一度にまとめてと昔から心に決めていただけに達成感はなんとも言い難い嬉しさで一杯であった。
写真を撮って雨も大丈夫そうなのでカッパを脱いで聖平への下りにかかる。
ガレ場の下りが続き、おまけに結構急でかなり足に来る。時々激痛がはしって立ち止まる。体を横にしながら慎重に下って来るのでかなり遅くなってしまう。
一旦緩やかに登って下り木道がある聖平に着く。この先が聖平小屋だ。
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聖岳からガレた急な下り |
痛い足を引きずりながら小聖岳にて |
痛い足を引きずって聖平小屋に到着。テントの申し込みをしてテントサイトに行くと天気が回復して青空が見えてきた。
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テント場で乾かせるものは何でも干す |
テントを建てて、シュラフも靴下も乾かせる物はなんでも外に出して乾かした。
ずーっと着ている長袖シャツも水で洗って木に引っかけて干した。今日は汗くさく無く眠れそうだ。
聖平も水が豊富でテント場から近いので大変便利である。水場で頭から水をかけて頭を洗って人目もはばからず裸になって体を拭いた。
聖平では今冬期小屋の建設が行われており、たくさんの職人の方々が働いていた。体を拭きながら休憩していた若い職人と話をしたら2週間前にヘリコプターでやって来たとの事。この2週間は休みが無く、山登りなんてやった事が無く、山の中での生活も初めてでまいっちゃいますよと話していた。
一番年配の人は「テレビは無い」「ラジオはNHKしかはいらない」「仕事終わって酒呑んで飯食って寝るだけ」「おまけに帰りは歩きだよ」ほんと早く家に帰りたいとボヤいていた。
この人達、仕事しながら我々登山者を眺めながら「山登って何が楽しいのかねぇ〜」ときっと思っていたに違いないな。この人たち10月末までいるんだって、ご苦労様。
さて洗濯したり干したりしていたら小屋の人が「テント場の人もどうぞ」と声を掛けてくれた。何かと思って行ってみるとスイカをサービスしてくれている。
久しぶりに食べた生物だったのでとてもおいしかった。 問題は足の痛みだけなんだよな。
熊ノ平で会って最後まで行程が一緒だった東京のAさん
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57歳で私と同じルート、しかも去年に続いて2回目、この人も凄すぎ〜 |
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三伏峠から一緒の神戸のFさん、女性の単独テント泊、
あるいみこちらも凄いよな〜 |
あまりにも天気が良かったので夕方聖平で明日向かう縦走路を写真に撮って今日は本当にゆっくりした時間を過ごす事が出来た。
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夕方聖平にて |
明日の縦走路 上河内岳〜茶臼岳方面 |
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聖平小屋にて |
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百間洞山の家〜聖岳〜聖平小屋 ルート断面図 拡大します |
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百間洞山の家〜聖岳〜聖平小屋 立体ルート図 拡大します |
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